あいさつの重要性

さいたま赤十字病院 池野 裕太

「礼に始まり礼に終わる」

この言葉を聞いたことはあるだろうか。

私は学生時代柔道をしていた。柔道は、日本が発祥である世界に誇れる格闘技であり、礼儀を重んじる厳格なルールに則った競技である。道場への入場時、また練習や試合の前後には必ず「礼」を行う。また、相手がいないと何も成し得ない競技であり、日々の練習の中、切磋琢磨しあう相手がいて、初めて自分自身を高めることができる。そのため試合においては、心を込めて礼をすることで相手への敬意を表している。柔道を通して私は心身ともに鍛えられ、この経験が私の核となる部分となった。

あいさつは、職場においても必要なことである。職場の上司や同僚と良好な関係を築くためには、あいさつがしっかりできているかが重要である。あいさつをする、といってもただぶっきらぼうにするのではあまり意味がない。明るい声や表情で話しかけられて気分を害する、という人はいないであろう。むしろ、好印象を与えることができる最強のコミュニケーションツールではないだろうか。このあいさつの輪が広がっていくことで、職場の雰囲気も明るくすることができ、他職種の人も一緒に仕事をしたいと思うようになるだろう。

このように、あいさつは自分自身を受け入れてもらいやすくなるという効果も発揮する。そしてさらに、相手の目を見ながら挨拶するとより効果を高めることができる。あいさつを交わすだけで、相手も自分のことを気にかけてくれていると感じることができ、好印象を持ってもらいやすくすることができる。あいさつを明るくする、それだけで信頼関係を築くことができる。

このことは患者に対しても同様のことが言えるのではないだろうか。私は現在放射線治療の業務に携わっているが、放射線治療を行う患者は、放射線治療について大小問わず多少なりとも不安を抱えて毎日来院する。患者は治療に専念しなければならないのに、私たち医療従事者のあいさつがしっかりできていないだけで、さらに不安は募り、ひいては態度が悪く見えてしまうという悪循環に陥ってしまう。そのため私は、患者と接するときはしっかり明るくあいさつをし、信頼関係を築き、安心して治療を行えるように留意している。

ここまであいさつの重要性を話してきたが、診療放射線技師になって6年目になった今、新人の時のように明るく、しっかりとあいさつをすることができているだろうかと感じることがある。あいさつが1番重要なことだと教わってきたが、仕事や環境に慣れてくると少し怠ってしまう部分があったのではないかと反省している。

 

今回、この巻頭言を書かせていただき、自分の原点を思い出し、自分を見つめなおす機会となった。読者の方も、あいさつの重要性について見直す機会となれば幸いである。

当たり前の日常

 

埼玉県立がんセンター  佐越美香

 

 

新型コロナウイルス感染症の影響で、社会的に大きな変化が出てきている。

個人としては、外出自粛のため自宅で過ごす時間が増えた。

これまで当たり前だったことが、今は当たり前ではなくなっている。

仕事をすること、いつでも物が買えること、旅行に行くこと、娯楽施設に遊びに行くこと、友達や家族に会って話すこと、今まで何の制限のなかった行動が自粛要請により、今はやりたくてもできない状況である。このような状況になって、改めて普通の生活のありがたさを深く実感しているとともに、人は人との交流がなくては生きていけないものだと感じている。

 

新型コロナウイルス感染症で一変した生活の中で、最もありがたいと思ったことはやはり健康である。今現在も感染したり、亡くなる方もいる。そんな中で無事に生活を送れるのはありがたいことだ。

 

また、病院で働く者として感染者数の急増を抑え、医療崩壊を防ぐことが何より重要であると考える。病気は新型コロナウイルス感染症だけではない。

短期間で感染者数が急増すると、従来の病気や怪我の検査や治療で病院に来ている患者さんに影響が出てしまう。

病院で当たり前に検査や治療ができる環境は絶対に守られなければいけない。

そのためには、誰もが感染の可能性がある中で、今の健康を維持するため、11人が意識をもって生活をしなければならない。

 

先の見えない不安は常にあるが、現状を受け止め、1日も早く落ち着いた当たり前の日常が戻ることを願っている。

 

 

 

巻頭言

ワークライフバランス

 

埼玉県立小児医療センター 吉村茜

 

社会人になって5年が経過した。学生のころは同年代の気の合う仲間としか過ごしてこなかったが、社会に出ると年齢はもちろんだがいろいろな人と出会う。そういった中で特に自分とは違くてすごいなと思う点は趣味についてである。上司の一人はスキー、スノーボード、乗馬、カメラ、釣りが趣味で、またある上司はスキー、ツーリング、農作業、クルージング、サックスが趣味だという。今までこんなにも趣味がある人に出会ったことがなかったし、きっと私が知っているのはほんの一部なだけで、お二人は上記以上にもたくさんの趣味があるのだろう。最近になって始めた趣味もあるというのだから驚きである。

なぜそんなにも趣味があるのに新しく趣味を始めたのか聞いてみたところあるきっかけや、憧れの思いからだそうだ。

 

またこの多趣味なお二人に共通しているのは性格の明るさである。多くの趣味を持つことで楽しい生活が送れ、それが性格にも現れ仕事にも活かせているのだろう。まさにワークライフバランスがとれているのだと考える。改めてワークライフバランスについて調べてみたところ、ワークライフバランスとは一言で言うと「生活と仕事の調整・調和」であり、生活の充実によって仕事がはかどり上手く進み、仕事がうまくいけば私生活も潤うという相乗効果を意味するそうだ。

ある結果によるとワークライフバランスは社員・職場全体のモチベーションにも好影響を及ぼしており、プライベートが充実していることが仕事のモチベーションの向上へと繋がるそうだ。職場のモチベーションが上がることで技術やコミュニケーションの向上も見込めると考える。

 

 

 私も趣味だけに関わらずいくつになってもチャレンジ精神をもっていろいろなことに挑戦することで成長していきたい。

 

2020年第1号

 

巻頭言

 

 

『コミュニケーションの難しさ』

 

 

 

大宮中央総合病院 小屋 匠

 

 

 

時間が経つのは早いもので診療放射線技師として働き始めて10年目になった。私は転職を繰り返し、現在の職場が3施設目となる。今までクリニック勤務だったため病院に勤めるのは今回が初めてだった。規模が大きくなったこともあるだろうが改めて思うのは、この歳になっても他人とのコミュニケーションは難しいということだ。患者はもちろん、職員も蔑ろには出来ない。上司、先輩、同期、後輩、医師、看護師、その他コメディカルといった様々な人達と接するため悩みは尽きない。そんなとき私は1施設目の接遇研修の講師からの教えを心がけて他人と接するようにしている。

 

『人はおおまかに4つのタイプに分けられる。そのタイプによってコミュニケーションの方法が違う。方法を間違えると話が全く通じないこともある。』当時、大学卒業したての私にはこの講師の話がピンと来なかった。しかし、社会人として組織に所属することで否応無くその意味を知ることになる。例えば、上司や先輩への報告の際、一から順を追って説明した方がいい人もいれば、結論から話して全体をざっくり説明した方がいい人もいる。理由や経緯も説明に加えた方がいい人もいる。これが正しく行われないと、報告が出来ない奴になってしまう。また、逆の立場ならどうだろう。後輩への指導や仕事を頼む時も自分は伝えたつもりだが出来ていない。それで怒ったり叱ったりすることもある。しかし、そもそも伝え方を間違っていたなら相手はこちらの話を理解していないので出来るわけがないのだ。

 

タイプの違いを見極め適切な説明を行わないとコミュニケーションがとれているとは言えない。仕事を依頼するときはどのように説明すれば相手が理解できるか。仕事を依頼されるときは相手が自分に何を伝えようとしているのかを考えなければならない。

 

チーム医療や多職種連携が推進される現代において円滑なコミュニケーションがとれないというのは診療放射線技師として死活問題である。そうならないためにも常に相手に伝わる言い方、相手が自分に何を伝えようとしているのかを理解する姿勢が改めて必要なのだと思う。