2017年第4

巻頭言 

 

ワーク・ライフ・バランス

 

埼玉県立小児医療センター  春日 沙織

 

 みなさんは休日やプライベートの時間をどのように過ごしているだろうか。また、その時間に満足しているだろうか。

 

 最近よく『ワーク・ライフ・バランス』という言葉を耳にする。この言葉に統一された定義はないが、『仕事と仕事以外の諸活動のバランスが取れた状態にあること』が共通認識として存在する。仕事以外の諸活動というのは、家事や子育て、介護であったり、家族や大切な人との充実した時間であったり、自己啓発や地域活動への参加であったり、人によって様々である。プライベートな時間を充実させることで、仕事に対しても前向きに取り組むことができ、組織としても大きなメリットとなる。組織全体の創造力を高めていくためにも、働く人々の意欲と能力を高め、一人ひとりがイキイキと働けるような組織を目指していく必要があり、そのためには『ワーク・ライフ・バランス』への取り組みが不可欠となっている。

 

私は子育てや介護をしているわけではないが、友人と過ごす時間や、趣味に充てる時間などのプライベートな時間は充実させたいと考えている。働き始めのころは「なんで週に5日も働かなければならないんだろう」という気持ちがあり、仕事への意欲はかなり低かった。友人とご飯を食べにいったり、スポーツをしたり、旅行に行ったり、もっといろいろやりたいことがあるのに仕事で疲れてできず、不満も多かった。社会人1年目で、まだ「働く」ということ自体に慣れておらず、覚えることも山ほどあり、早く帰りたいけど定時では帰れないなど、いろいろなストレスが重なり、自分の中での「仕事」の重みがだいぶ大きくなってしまっていた。そのことも、不満が溜まる要因のひとつだったのだと思う。しかし最近では、自分の中で仕事とプライベートの時間のバランスが取れるようになってきたことで、仕事に対する意欲もだいぶ変化してきた。定時であがれるときには定時であがってアフター5を楽しんだり、家事をしたり、休日に○○をするために頑張ろう、今週頑張れば楽しい旅行が待っている!など、充実したプライベートがあるからこそ、仕事を頑張ろうという気持ちになり、前向きに仕事に取り組むことができる。また、上司や同僚たちとコミュニケーションを取ることで、プライベートな事情や抱えている業務の状況などについて把握し、お互いの事情に配慮したり、協力体制を構築したりすることもでき、とても良い環境で仕事ができていると感じる。ノー残業デーを設定することや、育児休暇や有給休暇を取りやすい制度をつくることも大切だが、こういった職場内でのコミュニケーションを取ることも、『ワーク・ライフ・バランス』の実現には必要だと考える。

 

人それぞれで時間の使い方は異なる。プライベートよりも仕事の時間を充実させたいと考えている人もいるだろうし、プライベートな時間があるから仕事を頑張れると感じる人もいるだろう。自分に合ったバランスでライフスタイルを形成し、それをお互いが認め合うことで、自身の生活を充実したものにできるのではないかと私は考える。

 

 

2017年第3

巻頭言

 

何を重視して働くか

 

          JCHOさいたま北部医療センター 倉内 克憲

 

 

仕事の早さや効率の良さ、丁寧さや正確性はどれも働く上で必要な要素です。もちろんそれらすべての能力を兼ね備えていることが理想ではありますが、私自身まだまだ未熟なもので理想通りにはいかない状況が多々あります。

 

私は放射線技師になって約10年たちましたが、働き始めの頃から意識の持ちようとしてスピードや効率の良さを最も重視して働いてきました。もちろん丁寧に仕事をしていないというつもりはありませんが、時間に追われる事や患者様を待たせるという事を非常に嫌がってしまう部分があるためか、どちらかといえば丁寧さよりもスピードを重視して働いていた気がします。患者満足度という事を考えても、より多くの患者様を効率良く検査して、少しでも早く画像を医師の元へ届けることが患者様の満足に繋がると思って働いてきました。

 

ただ最近では、丁寧さや正確性を第一に重視する方が、放射線技師としてより良い働きができるのではないかと感じています。スピードを第一に考えてしまうと、その時に余裕が有るか無いかで仕事のクオリティが一定ではなくなるというような可能性も考えられます。患者満足度という点では不安な気持ちを取り除き安心させるという様な事が疎かになっていた時もあると思います。この先、放射線技師として更なるステップアップを目指すのであれば私自身はその丁寧さの質を上げなければいけないと考えています。

 

仕事の早さや効率は確かに重要な要素で、スケジュールが遅れてしまってはいろいろ支障をきたすと思いますが、だからといって雑に仕事をこなしては質が低下してしまうおそれがあります。そのあたりのバランスを取ることは中々難しいことですが、置かれている自分の状況を把握しながら、意識下では丁寧さや正確性を第一に考え働いていきたいです。

 

その為には自分の知識が十分でなければ、丁寧で確実な仕事も効率の良いスピーディーな仕事も出来ないと感じているので、これから更に知識を磨いて理想の働き方に少しでも近づけるように日々精進していきたいと思います。

 

2017年第1

巻頭言 

 

ポジティブシンキング vs ネガティブシンキング

 

              丸山記念総合病院  木村 浩明

 

 

 “ネガティブ・シンキング”とは、辛いことや嫌なことがあると何でも悪い方向に考える思考をいいます。酷くなると被害妄想的になり、精神的にも影響してしまうので悪い意味で多く使われます。

 

 一方、なんでもプラス思考にとらえる“ポジティブ・シンキング”は、いい意味で捉えられる場合が多々あります。何か悪いことが起きても、悪いことは早く忘れて次に進んだり、それ以上の悪い状況を想像して不幸中の幸いだと考えたりなど、自分のなかの悪い面に気づき改善したり自分を高めるには、非常に良いことだとされています。しかし、人はなかなか自分の思考パターンを変えることはできません。マイナス面が目につき出すと、どうしてもさらに悪い方へ考えてしまい、深みにはまってしまうと、どうにもならなくなって自分の思考に縛られてしまい抜け出せなくなる事もあります。どんな問題が起きても冷静に客観的に自分を見つめ“ポジティブ・シンキング”で乗り越えて力をつけながら前進できる人を見ると、本当にえらいなぁと感じるのは確かです。ただ“ポジティブ・シンキング”もはき違えてしまうと怖いものです。 

 

 例えば、いつもニコニコしていて、どんな失敗をしてもへこたれず、いつも前向きな人がいるとします。初めてそういう人を見たときは、その精神力の強さと前向きさに感心しますが、長くつきあっていると同じ失敗を繰り返していることに気づくこともあります。いつも笑顔を絶やさない事と前向きさはえらいなぁと思っていても、ふとした対処や行動に「あれ?!」と思うことがあった場合、果たしてこれは“ポジティブ・シンキング”なのだろうか?それとも、ただ反省しない人、あるいは学習能力のない人なのか?と疑問に感じてられてしまいます。同じ失敗を繰り返していると、次第に周りから信用されなくなり、そんな人に「一度失敗したからといってクヨクヨしないで、もっと前向きにがんばって」などと笑顔で言われても、しっくりきません。

 

 それに比べたら、いつも先回りして心配しながらも失敗したときのことを考え、「もし○○が起きたときは、この方法でやり直す」「ここで失敗したときは、こうする」などとあらゆる対応策を立てている人の方が、現実的にはうまくいくように思います。「そこまで考えなくてもいいじゃないか?」と言われるほどの最悪の状況を考える“ネガティブ・シンキング”をしても対応策を考えることができれば、ある意味で徹底した危機管理能力があるからだと思うのです。

 

 失敗から学ばない“ポジティブ・シンキング”でスキだらけの状態と、必要以上の“ネガティブ・シンキング”を利用して、いざというときに備えるのであれば、後者のほうがいろいろな意味で成功する場合が多いのではないかと私は考えます。

 

 “前向きな姿勢からくる自信”と“自己の欠点も見えない過信”との違いを見極めるのは難しいですが、“ポジティブ・シンキング”と“ネガティブ・シンキング”は、時と場合を考えてバランスをとりながらうまく使い分けるのがいいと思います。